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2013年01月 アーカイブ

2013年01月05日

いよいよ明日、三重にて初上映!

しんしんと冷える年明けである。
明日、三重県津市の三重総合文化センターにて
「千年の愉楽」が上映される。
本日、中日新聞に遺作先行上映記事が出て
朝から沢山のお問い合わせの電話を頂いた。

気が引き締まる。

監督がいないままで、作品を公開するなどという
そんな事態を誰が予測しただろう。
作家の眼差しを、代弁することは、不可能だ。
ただ、その作品に、若松組に携わった一人一人が
自分が目撃したその現場を語るしかない。

そして何より、作品を楽しみにしてくださる沢山の人が
待っていてくださるという歓び。
いよいよ、産声を上げるときが来た。

前に、監督が、公開前日に言った言葉がよみがえる。
「あの作品は、僕らの子どもだよ。
明日、おぎゃんと産まれるんだよ。
もう、こっちの手を離れてヨチヨチ歩き出す。
そうなったら、作品はもう、見た人一人一人のもの。
こっちはもう、言い訳も何もできないんだよ」

何十本もの作品を産み落として来た監督らしい言葉だった。
監督、最後の子どもが、明日、おぎゃんと産まれますね。

明日の上映は、10時、13時30分、17時の三回。
各回とも、上映終了後に、高良健吾、高岡蒼佑、佐野史郎、井浦新が
トークイベントに登壇する。
若松孝二の遺作を、お客様と共有すべく。

2013年01月07日

三重の空に飛び立った「千年の愉楽」

1月6日。三重の空は晴れ渡っていた。
津市内の三重県総合文化センター多目的ホール前には
9時30分の開場の1時間以上前から、列になったお客様の姿があった。
若い女性たち、杖をついたご高齢の方、老若男女が入り交じった列だった。

監督はいない。
しかし、スクリーンの中にいる。
これから、監督の最後の新作が、産声をあげて歩き出す。
ぐるぐるとまわっていく思いとは別に
1日3回上映という慌ただしい一日が始まった。

開場のアナウンスとともにお客様が場内へ。
奄美三線の音楽が流れる場内の席がお客様で埋め尽くされた。
緊張とともに嬉しさがこみ上げる。

そして間もなく、佐野史郎、高良健吾
高岡蒼佑、井浦新が東京から到着した。
到着するやいなや、
控え室にて用意された1000冊の公式ブックへのサイン開始。
うずたかく積まれた本に向かって黙々とサインペンを動かすキャストたち。

その頃、劇場内では、監督の作品が、
スクリーンから、みている一人一人のもとへ飛び立っていた。

上映3回。トークも3回。
その合間にマスコミの取材とサイン書き。
昼食を落ち着いて食べるヒマもない慌ただしさだが
ステージに立つと、お客様にいかに作品の余韻の中で
この一時を楽しんでもらうかに心を砕くキャストたち。

監督の演出のギリギリの部分。
大谷派の読経を必死で憶えた苦労。
急遽前倒しで始まった半蔵のシーン。
演じる役と自分自身との距離感。
時折炸裂する監督の理不尽さと
それをも飲み込んで前進していく若松組の熱。
演技するなと怒り、キャメラを考えろと怒る監督の
奥底にある優しさ。

会場からの質問にも応えつつ、時に深く、時に笑いを交えながら
いくつものエピソードが披露された。
監督の不在をフォローすべく、キャストたちが
心を込めて壇上に立っている、その心意気を感じる。

DSCN0970.JPG

先行上映の一日目。
監督が気が気でなかったであろう、その日は、
慌ただしく終わった。
3回目のトークを終えたキャストたち、慌ただしく乾杯してから津駅へ。
夜もとっぷりと暮れた駅の改札で、キャストの皆さんを見送る。
監督がいた時、いつもいつも急かされて、いつもいつも慌ただしかった。
今回、監督がいなかったはずなのに、なぜか終始気持ちが急かされて
終始慌ただしかった。
ホームへと向かう同志たちの背中を眺めていたら、
監督が横で、満足そうに仁王立ちしている気がした。
「監督、始まりましたね」

その後、井浦新から写真が送られてきた。

ryuun.JPG

「先行上映の様子が気になって、
 見に来てましたよ、やっぱり」

津へと向かう新幹線の車窓にて。
大きな龍が、澄んだ空を駆け上っていたという。

14日は、シネリーブル神戸、京都シネマ、テアトル梅田、第七藝術劇場にて。
17日は、テアトル新宿にて。
先行上映が続く。

2013年01月09日

黒田征太郎さん「千年の愉楽」ポスターについて

今回、「千年の愉楽」のポスターを
描いてくださったのが
画家の黒田征太郎さんです。

IMG_5543.JPG

黒田さんは3日間のライブペイントで
200枚ものポスターを手描きしてくださいました。
日々、黒田さんの指先から、中上健次さんの「千年の愉楽」の世界が
新たな姿でうごめきだしていった3日間でした。

http://www.wakamatsukoji.org/blog/2012/06/post_182.html

この黒田さん手描きのポスターは、これから
「千年の愉楽」上映劇場各地で、展示してきます。
そして、各劇場でポスターのオークションを行います。
これは、生前から監督が言い続けていた事でした。
本当は、監督の次の作品の制作資金にしたいと思っていましたが
今や、それはかないません。
今、監督の思いを次につなげていくために、何ができるだろうか。
私たちは考えました。
監督はよく言っていました。
「文化庁は、映画作品に助成金を出す必要なんかない。
 どれだけ多くの作品が、上映される劇場すら見つからずに埋もれていることか。
 単館系の心ある映画館が次々潰れていく、この状況を何とかしろ。
 くだらない作品に出す金があるならば、
 苦しい状況にあるミニシアターを助成しろと言いたい」

そこで、私たちは、オークションで得た資金を
若松プロにある数々の旧作のデジタル化とともに
各地のミニシアターへの助成金として使わせてもらいたいと考えました。
これからも、たくさんの作品が、スクリーンでお客さんと出会えるように。

「若い奴らには、映画をもっと見ろ、と言いたい。
 暗い映画館の中で、スクリーンの前で
 じっと自分自身と対峙しろって」(若松孝二)

各地の劇場にて、黒田さんの魂の作品をご覧下さい。
そして、よろしければぜひ、オークションにご参加ください。

若松プロダクション 一同

2013年01月16日

関西弾丸ツアー終了!明日はテアトルへ

14日に「シネリーブル神戸」「京都シネマ」
「テアトル梅田」そして「第七藝術劇場」と
4つの劇場での先行上映イベントをこなした
佐野史郎、高良健吾、高岡蒼佑、井浦新。
4つの劇場とも立ち見席まで出た満席になり
若松組恒例、観客とのキャッチボールを交えた
トークセッションも行われた。

翌15日は終日、分刻みの目まぐるしいマスコミキャンペーン。
若松プロの強力関西地区宣伝マン、風まかせの松井寛子氏による
ゲリラ的なスケジュールは今回も健在だった。
キャストたちは3つの部屋を行ったり来たりしながら
新聞、テレビ、雑誌、ラジオと
精力的に各媒体の取材に応じていった。
そして、夜遅くの新幹線で、一路、東京へ。

このエンジンが全開の状態で、
向かうは、明日のテアトル新宿である。
18時40分/21時20分 2回上映
各回上映後に20分のトークあり。
残念ながら座席は全て完売したが、
2回目の立ち見席は若干残っているとの事。

今回は、主演の寺島しのぶも壇上に。
都内でも作品が飛び立って行く、その瞬間、
寺島らキャストは、どんな言葉を観客に届けようとするのか。
若松孝二に、どんな言葉を贈るのか。

大島渚さんも、いってしまった。
次々と飛び立って行く彼方には
一体何が待っているのだろうか。

「なあんも、おとろし事はない!
 何が待ち受けていようと、
 あたしがこの世に取り上げちゃる!
 さあ、こっちだ!おいで!」
女たちの腹からひねり出て来ようとする赤子に
オリュウノオバがかける言葉。

この世とあの世を、行ったり来たりする
ホトトギスが、劇中なんどもその声を響かせる。

監督、やっぱりこれは、若松孝二の
最後にして始まりのような、そんな歌になりましたね。

2013年01月18日

疾風怒涛のテアトル新宿

1月17日、テアトル新宿の夜。
ムービーからスチールから、群れなすマスコミで
ごった返すロビー。
監督の定位置に、その姿がないとか
真っ先にマイクを握ってトークを席捲してしまう
監督がいないとか、何だとか、もう感じる余裕すらない
疾風怒涛の先行上映会の幕開けだった。
急遽決まった、ロビーでのマスコミ囲み取材一回追加。
数日間に膨れあがったマスコミからの問い合わせ。

こちらの意図とは別のところで、何かがスルスルと動いて行った。

「段取りなんか、決めたって、それ通りになんて
 絶対にいきっこないんだから!」
あれこれと考え続けるこちらの脳裡に、監督の常套句が甦ってくる。

撮影現場もそう。人との関係もそう。何かの取材もイベントもそう。
監督は、段取りを決める事にすごく抵抗していた。いつも。
その瞬間の空気、人との距離、そうしたものを大切にした。
若松監督の最後の作品、若松組らしく、送りだそう。
言葉で確認しなくても、そこにいる誰もが、
無言のうちに、その思いを共有しているようだった。

キャストたちも全力で、作品を支えるべく奔走した。
囲み取材のマスコミのマイクに向かい、キャメラに向かって
この作品の熱を伝えるべく、言葉を紡ぎ続けた。
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みんなで作りあげた作品、
みんなで送り出していく作品だ。

劇場内からエンドロールの音楽が漏れ聞こえてくる。
もうすぐ、舞台挨拶だ。
ロビー通路で待つ私たちの耳に飛び込んできたのは場内の拍手。
その瞬間に、頭の中で何かが吹っ切れた。

監督、聞こえましたか?
お客様が、作品を受け止めて、
お客様の中で、作品が新たな命となって生まれ変わった音。
そうだ、作品は観た一人ひとりのもの。
向かうべきは、スクリーンの前のお客さまたち。

あとは、いつもの通りだった。
寺島しのぶ、高良健吾、高岡蒼佑、佐野史郎、井浦新が壇上へ。
自分の言葉で、作品を語り、監督を語る。

「今、ここにいない事が不思議で仕方がない。でも、
きっと今、監督はとても喜んでる」と寺島が語り、
「監督不在の中で、監督から教わった事を受け継いでいく事は
 厳しい仕事になる」と佐野が語る。
「仕事のオファーをくれた時、監督は、自分に、何も言わず、何も聞かず
 ただ、僕の居場所を作ってくれた。失敗したと周りに思われている事も
 そうではないんだと思わせてくれた」と高岡が語り、
「クランクイン前、爆発しそうな自分を抱えて監督と会った。
 少年時代からの自分のことを監督がずっと何時間も語ってくれて
 勇気とエネルギーをもらって、歩いて帰った」と高良が語った。
「100本以上つくり続けて来た監督の、自分は監督の作品の一部になった」と
井浦が語った、監督への思いが充満した第一回目の上映後トーク。

そして二回目上映後。
すでに23時半を回ったが場内は相変わらず満席状態で
キャストたちの登壇を待ち受ける。

今回のトークは、一言ずつの挨拶のあと、すぐに
若松組恒例、お客さまとのティーチインへ。
わずか20分という限られた時間であっても
作品と出会った観客の余韻をできる限り受け止めたいという
キャストたちの心意気である。

作品が伝えたかった事は何か、という問いに
「作品は、見た人のものだから、どう読み取るのも自由」と
それぞれが前置きしつつ、時間と空間の中に積み重なったもの
日本の原風景、生まれて死んでいく営みへの眼差し
一人一人が、自分の言葉で作品と向き合い演じた思いを語った。

予定調和はどこにもない。
いつも、剥き出しの作品がそこにあり
スクリーンと対峙する剥き出しの存在がそこにある。
答えは、どこにもない。

ただ、作品が、観客によって、新たな命を吹き込まれた。
いくつもの姿に変わって、飛びたって行った。

全てが終わって、夜の新宿を歩いた。
佐野が取材の時、言っていた言葉を思い出す。
「ほんとなら、今夜は後で、監督と二丁目の店に
行くはずなんだけどな」

新宿のネオンの中に、監督と行きたい店が
何軒も、浮かんでは消えた。

次に向けて、気を引き締める。
次は、2月9日の尾鷲市、2月10日の新宮市。
尾鷲はロケ地となった須賀利の集落のある場所。
懐かしい風景が待っている。
どちらの会場でも、高良健吾、高岡蒼佑、井浦新が各回トークを行う。

2月9日(土)尾鷲市民文化会館(せぎやまホール)
12:00/15:30
当日券のみ(11:30よりホール入り口にて販売)全席自由1000円
各回上映終了後にキャストトーク。
共催:財団法人尾鷲文化振興会

2月10日(日)新宮市民会館大ホール
12:30/16:00 全席自由1000円(前売りも1000円)
12:30の回は上映終了後に、16時の回は上映前にトーク。
前売り券の販売場所は以下。
新宮市観光協会/文具センターツツ井/荒尾成文堂
勝浦観光協会/TSUTAYA WAY新宮仲之町店
共催:熊野しんぐうフィルムコミッション

2013年01月28日

代官山TSUTAYAにてDVD発売記念トーク

文字の情報を極力そぎ落とした「11.25自決の日」
DVDとブルーレイのジャケット。
25日(金)からセルとレンタルを開始した。

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監督は、文字情報をあれこれ入れることを
「実録・連合赤軍」の時も極端に嫌っていたのを思い出した。
昨年5月。この作品を持ってカンヌへ行った日が
はるか昔の事のようだ。

「11.25自決の日」よりも3ヶ月ほど早く
全国公開した「海燕ホテル・ブルー」のDVDとブルーレイも
同日発売した。

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監督の盟友・船戸与一氏の原作が
摩訶不思議な若松孝二の世界観の中で姿を変えた。
ジム・オルークの音楽が、黒砂漠と海に囲まれた広大な密室を包み込む。

さて、今回のDVDとブルーレイの発売を記念して
代官山TSUTAYAにて、出演者たちのトークイベントを行う。
久しぶりに集う、若松組の常連陣。
互いに、それぞれの時間を過ごしている2013年の今、
再び、顔を合わせて言葉を交わせるひと時が待ち遠しい。
監督不在のがらんどうな空洞に、言葉が響いてくるのだ。


【DVD発売記念イベント概要】
井浦新×満島真之介×大西信満×片山瞳スペシャルトークショー

【日時】2013年2月4日(月)19:00〜(18:40開場予定)
【場所】代官山蔦屋書店 1号館2F 映像フロアイベントスペース
【参加方法】整理券配布
【購入者特典】
当日は、蔦谷書店映像フロアにて下記対象商品購入者にサイン会を実施
【対象商品】
ASBD1063「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」BD
ASBY5467「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」DVD
ASBY5469「海燕ホテル・ブルー」DVD
【問い合わせ先】蔦屋書店1号館2階映像フロア(電話03-3770-2525(代表))


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