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2007年12月 アーカイブ

2007年12月18日

公開記念オールナイトイベント第二弾、ヒートアップ!


 先週の土曜日、オールナイトイベント第二弾、テアトル新宿は、またまた熱気
に包まれました。
 残念ながら、ビザが間に合わずに演奏できなかったジムさんがニューヨークか
ら送ってくれた声のメッセージでスタートしたオールナイト。平岡正明さんの、
味わいとネタが満載のトークを挟んで登場した渚ようこさんの歌声と高橋ピエー
ルさんのギターで、場内は1960年代、70年代の空気に満たされました。
「ママ ぼくでかける ぼくのお巡り殺しに ぼくのみんなを殺しに」(ゆけゆ
け二度目の処女)
 演奏できなかったジムさんの分まで、渚さんは、何曲も歌い続けました。そし
て、ラストは、「実録・連合赤軍」の劇中歌としても使われている「ここは静か
な最前線」(天使の恍惚)
 連合赤軍事件が明るみに出て、人々が衝撃を受けている頃に上映、劇中と同じ
ように現実でも交番が爆破される事件が起きて、大騒ぎになった作品の主題歌です。

 ライブの後、「実録・連合赤軍」メイキングVol.2の上映を挟んで行われた
トークが、かなりの荒れ模様となりました。元赤軍派議長の塩見孝也さん、元連
合赤軍兵士の植垣康博さん、元ブントの平野悠さんらを迎えてのトークですか
ら、荒れないはずがなかったとも言えます。
 元議長として、赤軍派の路線と、その後の連合赤軍事件の総括について語る塩
見さん、現場のコマンドとしての極限を語る植垣さん。その植垣さんに「へらへ
らするなよ!もう少しうなだれろよ!」、連合赤軍事件が、当時の新左翼活動家
にどれほどのショックとダメージを与えたかを考えてくれ、と思わず叫んだ平野
さん。
 連合赤軍事件によって、それぞれがこの何十年もの間、背負い続けているもの。
 決して総括しきれないもの。
 会場からの問いかけなどもあり、予定時間を上回ってトークは続きました。
 このトークの模様は、来年2月発売予定の書籍「実録・連合赤軍」(朝日新聞
社刊)に一部収録する予定です。
 その後、ヒートアップした会場で、監督のレトロスペクティブ上映と続きました。
 逃亡中の活動家集団をかくまう孤高のテロリストを描いた「セックスジャッ
ク」(1970)と、バブルに沸く日本で、かつて新宿騒乱で警官に頭を割られ、今
はひっそりと喫茶店を営む男性を描いた「われに撃つ用意あり」(1990)。
「われに撃つ用意あり」のラストは、エンドロールのバックに、ずっと1968年の
新宿騒乱のモノクロ映像が流れていきます。そして、その映像は、いつしかネオ
ン眩しい東京の夜景の中に埋もれていきます。何が変わったのか。何が見えなく
なったのか。何も変わっていない。そこにある。
 そんな監督のまなざしを感じました。
 冷え込みの厳しい早朝5時半に、イベントは終了しました。みなさんからのア
ンケートには「久しぶりに若松作品にひたれた」「トークバトル、おもしろかっ
た」「皆さん、とても情熱的で心にひめた思いのある人」といった言葉がありま
した。足を運んでくださった皆さま、本当にありがとうございました。
 朝焼けを横目に、自転車を走らせながら、トークの時の数々の言葉と、「われ
に撃つ用意あり」の原田芳雄さん扮する主人公の静かな闘志を、思い出しまし
た。熱いイベントの一夜となりました。
 
 さて、今月8日から14日まで、全国どこよりも先駆けての公開となった宮城県
大崎市のシネマリオーネ古川では、連日、さまざまな世代のお客さまが劇場に足
をお運びくださいました。9日の函館映画祭のクロージング上映にも、若松監督
と坂東國男役の大西信満さんが招かれ、上映後の討論会では、濃い討論が交わさ
れました。
 
 そしていよいよ、今週末より、名古屋のシネマスコーレにて封切りです。
 22日(土)の初日は、若松監督、ARATAさん(坂口弘役)、地曵豪さん(森恒
夫役)、並木愛枝さん(永田洋子役)、大西信満さん(坂東國男役)の舞台挨拶
もあります。
 ぜひ、劇場に足をお運びください。

2007年12月22日

シネマスコーレ初日、各回ほぼ満員でした!


 本日22日(土)、名古屋のシネマスコーレにて、ついに公開初日を迎えました。
 シネマスコーレでは、初回を朝の8時10分から、しかも、初回のみ700円とい
う特別感謝価格にて上映するという試みをしています。休日のこんな朝早くか
ら、果たしてお客様は足を運んでくださるのか・・・・一抹の不安の入り交じっ
た思いは、8時前から並んで待ってくださっていたお客様の姿によって吹き飛ば
されました。
 初回から18時40分のラストの回まで、毎回、会場はほぼ満席となりました。
 冷たい雨の中、傘をさして劇場前に集まってくださったお客様の姿に、胸が
いっぱいになりました。本当に、すばらしい初日を迎えることができました。あ
りがとうございます。

 各回上映後に、若松監督、ARATAさん、並木愛枝さん、地曵豪さん、大西信満
さんの挨拶と、会場でのティーチインが行われ、地曵さんが思わず「お客様の姿
が迫ってくる感じがして、怖いほどだった」と洩らすほど、次々とストレートな
言葉が飛び出しました。思わず質問しながら、感極まって泣き出した方、「万感
胸に迫る思いだ」と語って下さった方、「あまりに衝撃的な遠山さんの粛清シー
ン、撮影現場はどうだったのか」「一体、森恒夫は何を間違えて、あのような粛
清へと至ったと思うか」「実際に連合赤軍の兵士だった方たちは、この作品をど
う見ておられるのか」・・・・。
 遠山さん粛清の場面について、永田洋子さんを演じた並木さんは「状況が少し
でも違っていれば、本当は遠山さんと自分は親友になれたのかもしれない、とい
う気持ちになり、辛くて仕方がなかった。実際の永田さんも、もしかしたらそん
な思いを抱いていたのではないか」と語りました。森氏の過ちは何だったと思う
かと問われた地曵さんは「簡単に、ここで一言では言えない。人間の感情は日
々、揺れ動いていく。ただ、自分自身は、あの状況にどんどん追いつめられ、ど
うやってこの集団を維持してくかということに必死になっていた」と話しました。
 監督は「連合赤軍の若者を、権力の側から一方的に描いた映画や、ただ暴力と
セックスばかりを強調して描いた映画しかない状況では、監督として死んでも死
にきれなかった。60年代の出来事を含め、嫌なものは嫌だ、と声をあげ、立ち上
がった若者たちの生き方を、きちんと残しておきたかった。最後の少年の叫び
は、今、この映画を観ている一人一人に向けてのメッセージでもある。今の自分
たちは、嫌なものに対しては嫌だ、という生き方をしているかどうか」と語りま
した。

 二回目の上映後、一人の女性が監督にそっと歩み寄り、小さなお年玉封筒を差
し出しました。驚いた監督は「頂くわけにはいかない」と断りましたが、女性は
「ぜひ、みんなで美味しいものでも食べてください」と言い、名前も言わず足早
に立ち去っていかれました。監督が封筒を開けると、中には、新札の1万円札が
5枚。監督は言葉を失いました。さらに、この女性が、坂東さんの役を演じた大
西さんに「私はあの時代、血を流し損ねた人間。その落とし前をつけるために、
今朝は自分の手を切って、血を流してから見に来ました」と、手の傷を見せてい
たことがわかりました。
「長い監督人生の中、こんなことは初めての経験。あの映画を作ってくれてあり
がとう、という気持ちを伝えようとしてくれたのだろうか。こんな人と出会えた
だけでも、あの映画を作ってよかった」と監督は言いました。
「もう一度、見に来ます」「自分にも、今、すべきことがあるんじゃないかと思
えた」「3時間10分があっという間だった」
 上映後、皆さまからかけて頂いた言葉です。
 先日の「別冊カドカワ」のインタビューで監督が話していた言葉を思い出しま
した。
「映画っていうのは、スクリーンの上でのお客さんとのケンカだからね」

 今日、「実録・連合赤軍」と対話してくださった全てのお客様に、心からの感
謝を申し上げます。
 そして、これから劇場に足を運んでくださる皆さま、心から、お待ち申し上げ
ております。

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