『道徳のゲリラ』 

「血は太陽よりも赤い」は「俺は太陽になってやる!」という台詞で終わる。若松孝二の自叙伝のようなものである。女優の裸の肉体をふりかざし相対的安定ムードへ挑戦し、ベルリン映画祭にまで進出した若松は、いわば「道徳のゲリラ」であると言える。彼が、ファン雑誌の広告の読者たちに大きな欲望への目ざめを呼びかけ、画面いっぱいに性のオルガズムを映しつづけるあいだ、私は彼の映画を支持するつもりである。いささか教養のない点をのぞけば、彼は申し分なく「英雄的男」といえるからである。                                                             
寺山修司  『週刊文春』より

 

 

 


『逆情』 

監督:若松孝二  脚本:大石純一郎 
出演:寺島幹夫、扇町京子、公 敦子、手島昭彦
1964年 日本 ※未ソフト化

<崖下に転落した夫と子供を救うために妻は下着姿で奮闘するが、助けを求めた村には凶悪な脱走犯が潜伏していた。>
若松孝二監督の初監督から2年目の作品。無傷のネガが収集家の倉庫より奇跡的に発見され、ニュープリントからデジタル化された。

 

『欲望の血がしたたる』


監督:若松孝二 脚本:大谷義明
出演:上野山功一、叶美智子、生方健、香取環
1965年 日本 ※未ソフト化

<かつては全学連の闘士だった男は、大手証券会社の専務の娘と結婚し、エリートサラリーマンの地位を欲しいままにしていた。しかしそんな彼のもとに過去からの黒い影が忍びよる。>
若松孝二監督の初期作品の中で長らく行方不明となっていたが東京国立近代美術館フィルムセンターの倉庫より発見された。

 

「歪んだ関係」

監督:若松孝二 脚本:大谷義明   
出演:林孝一、城山路子 、新高恵子 、 吉沢京夫、 寺島幹夫、 藤田功
1965年 日本

<産婦人科医が朝帰りすると妻が殺されていた。はたして犯人は誰なのか。>
若松孝二監督が描く推理サスペンス。巧妙に仕掛けられたトリックなど、成人映画として製作されながらも推理に重きを置いた異色作。



『血は太陽よりも赤い』


監督:若松孝二 脚本:大谷義明 
出演:大塚和彦、若原珠美、笠間雪男、一の瀬弓子、山吹ゆかり
1966年 日本 ※未ソフト化

<受験を控えた男子高校生が様々な社会的不正に憤り、全ての大人への復讐を決意する。>
"『血は太陽より赤い』なんていうのは、渋谷の街の中で、トリの頭をバンと切って、通行人にバーッとぶっかけて、それを隠し撮りしたりした。寺山修司なんか、これを物凄く評価したね。街の中を、後ろにカンカラをいっぱいうえて、車でガランガラン走り回ったりね。アングラ的だったんでしょうね。"(若松・談)

 

『日本暴行暗黒史 異常者の血』

監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生)
出演:野上正義、山尾啓子、山本昌平、山谷初男、久保新二
1967年/日本 

"『日本暴行暗黒史 異常者の血』は「黒い血」というのがもとの題だったんだけど、天皇制みたいなものっていうか、その血を絶たなきゃダメというもの、足立正生が緻密に図式をキチンと書いてくれたシナリオで足立の脚本では最高のものでしたね。江戸時代、明治、現代までの話になっていて、一人の同じ役者にそれを演じさせた。当たったんだよ。"(若松・談)

 

『続日本暴行暗黒史 暴虐魔』

監督:若松孝二 脚本:出口出(山下治)

出演:山下治、林美樹、弥生京子、小柳冷子、ガイラ・ジョンソン
1967年 日本 


戦後まもなくの連続強姦殺人事件である小平義男事件を題材にした作品。映画監督でもある山下治が脚本・主演し主役の丸木戸義雄を熱演している。
"小平は可愛いい。ぼくは好きなんですよ。彼は自分を受け入れた女は殺さない。自分を拒否した女を殺すんです。親切にするつもりが変にとられて殺した。実際に洞窟の中で死体と生活して、死体と会話していた。"(若松・談)

 

『腹貸し女』

監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生)  
出演:門 麻実、吉沢 健、伊地知幸子、津崎公平、ジャックス
1968年 日本

<資産家の妾の姉は、妹と共に人工授精を受け財産を狙う。しかし妹は新聞配達の少年を愛していた。>
ジャックスがフーテン役を嬉々として演じる。時代に先駆け人工授精を題材にした作品。


『新日本暴行暗黒史 復讐鬼』

監督/若松孝二 脚本:出口出(足立正生)
出演:吉沢健、津島明子、田口一矢、関成夫、村岡五郎、津崎公平
1968年 日本 

<村八分にされ村人から陰惨ないじめを受けた青年の怒りが爆発する。>
若松孝二が描く「津山三十人殺し」。のどかな山村の風景とそこで繰り広げられる惨劇の対比が圧巻。憂鬱なテーマソングと兄に助ける求める妹の叫び声が脳内にこだまする。

 

『現代性犯罪暗黒編 ある通り魔の告白』

監督:若松孝二 脚本:出口出(福間健二)
出演:福間健二、芦川絵里、花村亜流芽、谷川俊之
1969年 日本 ※未ソフト化

撮影当時、都立大生だった映画監督の福間健二の脚本・主演による「現代性犯罪」シリーズの第一弾である。後に撮られる連続暴行映画の原型にもなっている。詩的で若さ溢れる福間健二の脚本とそれに応える若松監督の演出がさえわたる。

 

『日本暴行暗黒史 怨獣』

監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生)
出演:辰巳典子、野上正義、津崎公平、藤ひろ子
1970年 日本 ※未ソフト化

<吉三は幼馴染の庄太に裏切られ大金を持ち逃げされる。吉三の復讐が始まる。>
若松監督には珍しい時代劇、低予算ながらそれを感じさせない本格的な時代劇となっている。

 

『秘花』

監督:若松孝二 脚本:出口出(足立正生 、荒井晴彦)
出演:横山リエ、吉沢健、立原流海、矢島 宏
1971年/日本 

「天使の恍惚」の横山リエと吉沢健の出演で、革命闘争から逃げ出したカップルの顛末が「狂走情死考」の後日談的に描かれている。房総半島の九十九里浜の廃船を使用して撮影された。

 

『聖少女拷問』

監督:若松孝二 脚本:出口出(掛川正幸)
出演:島 明海、水紀ゆき子、下元史朗、宮田 論
1980年 日本 ※未ソフト化

キャタピラーの先駆的作品。
"「聖少女拷問」は昭和9年の話です。日本が軍国主義に走りつつある頃のことだね。史上最悪な冷害を東北地方が受けて、68000人の婦女が人買いに売られたという事実を背景にしている。ひとりの少女が売られてきて、同じ百姓出身の兵隊にいじめられるという話だ。三年にわたる冬、春、秋の話なんですよ。ちゃんと雪を降らせ、枯葉を飛ばした。五日間で撮ったのね、実に見事に撮ってます。俺は好きな映画だね。" (若松・談)

 

若松孝二プロデュース作品


『赤い帽子の女』

製作:若松孝二      
監督:神代辰巳  脚本:内田栄一 
出演:永島敏行、クリスチーナ・ファン・アイク 
泉谷しげる
1982年/日本 

<男は先輩の誘いでミュンヘンへと向かう、男はそこで赤い帽子の女と出会う。>第2次大戦前のドイツを舞台に、赤い帽子の女に魅せられた日本人青年の姿を描く。芥川龍之介の作ではないかとも言われる、作者不明の発禁小説の映画化で、脚本は「水のないプール」の内田栄一。


『戒厳令の夜』

製作:若松孝二 原作:五木寛之  
監督:山下耕作  脚本:夢野京太郎、佐々木守
出演:鶴田浩二、伊藤孝雄、樋口可南子
1980年/日本 

<古びたバーで、偶然発見された1枚の"幻の絵"はナチスドイツが秘匿したゲーリングコレクションだった。闇に葬られたはずの陰謀が動き始める。>五木寛之の同名ベストセラー小説を、ジョー山中の歌唱に乗せて展開させた壮大なミステリー。九州の怪老人役を鶴田浩二が熱演。